ミステリ小説

『ユリ迷宮』二階堂黎人

 中短編を3つ収録された単行本。表題作は密室物で先入観の裏をかいた秀作。最後に収録された中篇『劇薬』は昔から数多くかかれている衆人監視もので誰が毒を飲み物にいれたか云々というあれ。過去の作品を批判しつつもその限界や常識を打ち破ろうと躍起する作者の試行錯誤ぶりが文章からもみえてくる。


アメリカ銃の秘密』エラリイ・クイーン

 ローマ帽子を遥かに凌ぐ大観衆の前でカーボーイが射殺とこちらも衆人監視もの。トリックは小粒ながらも、しっかりと小さな取っ掛かりからするするとアリアドネの糸を手繰るように真相にたどり着くといういつものらしさが出ている作品だと思う。


黒後家蜘蛛の会1』アイザック・アシモフ

 チェスタトンのブラウン神父ものの縮小版というか、トリックが些細過ぎるというきらいがある。確かにちょっとしたひねりが加えようとする意図は十二分に感じることはできるんだけど、やはりトリックが些細過ぎて意外性という部分で弱さを感じてしまう。