老人の膿

 昨日本屋で町山智浩氏の映画本を読んでいて、フランシス・コッポラの「地獄の黙示録」におけるマーロン・ブラントに関する記述が、何かプロレスのある問題を私に思い起こさせた。当時既に名優と名を馳せていたブラントは、相当わがままだったらしい。それにくわえ百キロを超える巨躯になっていた為、当初予定していたものから結構逸脱したものになってしまったらしいのだ。画面は薄暗くブラントの全体像は鮮明には映されておらず、スキンヘッドの容貌は「聖戦士ダンバイン」のドレイク・ルフトを彷彿とさせる姿に成り果てていた。ベテラン俳優の身体的制限とわがままというのはこのままプロレスのベテラン大物選手の試合ぶりに当てはまるのではないだろうか(即ち老害)。

 私はこれを読んである試合を思いだした。それはzero-oneにおいて行われた、藤原喜明 ドン荒川VS栗栖正伸渕正信のタッグマッチだった。この試合はお笑いありのコミカルな試合だったが、一番の見せ所はやはり栗栖のイスだろう。もちろんそのイススポットはあった、然しそれはなんとも見苦しいスポットでショボイエクスキューズの後で場外のセコンドの若手に切れた栗栖が怒ったという理由付けでイスを若手の背中にちょうちゃくするというものであった。推測するに誰もが受けたくなかったのだろう。一応プロレスを15年見ているのでその辺了解はしているが、どこか引っかかる所があるスポットだった。奇遇にも週間プロレスではビル・ワットブルーザーブロディーに連日ジョブさせてプライドを傷つけまくったという記事もあったが、レスラーが引退せず年齢が高い選手だらけになり、不自由な状況が生まれやすくなり、結局ファンが選手の都合で構築されてつまらない体を張らない試合を見せられる状況が、ここ5年ぐらいで急激に増えてきてしまったと思う。この症候の顕著な例は新日本とノアであり、三沢光春や長州力などはその悪夢の代表的な体現者といってもいいだろう。マーロン・ブラントからここまでたどり着いてしまった・・・私こそ悪い症候になりかかっているのもしれない。

前田日明プロレス復帰の詳細は他の人気ブログで